創立5周年を前に
オーツェイドという会社を創業して来年の1月で5年を迎えようとしています。「良い音を日常に」のコンセプトの元、イヤホンの開発と販売に従事してきてコスパイヤホンメーカと呼ばれるようになったことを非常に嬉しく思っています。我々は呼び名の通りコストに対してどれだけのパフォーマンスを出せるか?を常に考えていて、それに対して妥協しない姿勢は基本中の基本だと思います。
現在、中国を筆頭に様々なイヤホンが市場に投入されてきていて、私も中国セラミック企業の技術顧問などをしていて痛感するのは、中国企業における生産技術のレベルが相当なレベルにあることです。潤沢な資金があること、労働賃金が安いことを武器に最新の量産設備を多数投入し、オペレータの数を増やして圧倒的な数量を生産するその生産技術はおそらくハード面で日本を凌駕しているように思います。
しかしそういった現場に実際に入って現地の技術者の方々と対峙して思うこと、それは「仏作って魂入れず」的なもの作りの姿勢です。これは以前の私の上司に聞かされた話ですが、スカイツリーを建設している作業員に何を作っているのかを聞いた際「日本一高いタワーを作っているんです」と誇らしげに答える人と「日当15000円の仕事してるんです」と現実的な答えをする人の違いのようなもので、同じものを作っていても仕事に対するモチベーションやプライドの持ち方で生まれてくる製品の品質は大きく変わります。こういった気概や夢、拘りこそが日本が世界に勝つために残された武器の一つではないだろうかと思っています。特にイヤホンのように感性を問われるものこそ日本人のもの作りの真骨頂では無いだろうかと思います。数の量産では無く、まさに質の量産です。当社のイヤホンにはセラミックツイータという尖鋭的なデバイスが一つの武器としてあります。そこには私自身が過去に大手企業で学ばせて頂いた様々な技術スキルが投入されていてオーディオデバイスとしてはユニークなデバイスであると思っています。しかしながらどんな良い食材を用いてもそのレシピが悪ければ料理が台無しになってしまうのと同じように、イヤホンとしてどういう音を具現化するか、どういう音を当社の音としてお客様に提供するかに徹底的に拘って開発をするレシピ「職人的開発志向」が当社イヤホンの目指す開発の方向性であると思っています。当社の場合、構造設計、音響設計など微細な設計や加工に拘り音作りをしています。特性という定量的な評価は当たり前のことですが、それは一つの目安でしかなく最終的には「人」が聴いて「良い」と思える製品作りこそが我々の目指す「もの作り」であります。無論100人の試聴者がいらっしゃれば、100個の嗜好があると思っています。だからこそ開発に携わるスタッフは私も含めて、より多くのお客様からご意見を伺って当社のもの作りに活かす努力を惜しんではいけません。
価格から考えると。。。。その構造は。。。。その特性を出すのには。。。。と日々我々は悩んでいます。そんな簡単に達成できる開発テーマはありません。だれかがブレークスルーしなければその先の道は開けません。視点を変えて限界を超える。まだまだ理想論ばかりが先立つ当社ですが、そんなマインドを持とうとする職人的エンジニアと日々仕事が出来る私は幸せだなぁと思う今日この頃です。