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開発日誌(2)

 大阪、東京いずれも新規感染者の数が減ってきているようです。39県で非常事態宣言が解除されて、少しずつではありますが新型コロナの件にも光がさしかけて来たように見える今日この頃ではあります。しかしながら政府や自治体に全て任せるのでは無く、我々国民の考え方と行動が未来を決めると思います。しばらくは新型コロナウイルスとの共存を上手くこなせる生活を選択したいですね。

 さて今日も自粛の中、開発日誌(2)を書きたいと思います。今日は筐体の材料開発に関する序章です。
 2017年、初代intime碧はフル真鍮ボディを採用しおかげさまで多くのお客様にご好評を頂きました。真鍮という材料は楽器などにも多く用いられていて”音響”用途には何かと重宝がられている材料と言えます。楽器の場合にはその響き方が評価されているようですが、イヤホンに用いた場合、私はその制震作用に良さがあると思っています。特に弊社イヤホンはVSTというセラミックの固体振動体をツイータとして用いています。PZTという比較的比重の大きなセラミック(厚み=約150μm)を、薄い金属の板で支持していますので、セラミックが自発的に振動する時のイナーシャ(慣性モーメント)は厚み10μm程度の樹脂製フィルムを振動させるダイナミックスピーカなどに比較にならないくらい大きくなります。ということはツイータが動いている時、それを支持する部材にはそれなりに大きな力が働きます。この力により筐体が動かされてしまうと、それは振動エネルギーのロスや音の歪の原因になります。
 そこで筐体に真鍮を用いると真鍮の比重の大きさが制震作用をもたらします(おそらくタングステンなども同じ効果があると思います)。セラミックといえども重い金属をそう簡単には動かせないということです。そのためツイータの支持は強固になり、結果的にロス無く効率的な振動を生み出すことが可能になります。さらに上述の楽器に用いられた場合同様に真鍮の持つ音の響きもきれいな残響効果を生み出し、イヤホンを作る上では音質面でも有効になります。こうして考えると真鍮という材料はイヤホンの筐体には比較的適した材料であると言えますね。
 しかしながらその一方で課題もあります。それは重さです。intime碧はフル真鍮筐体でした。その為重量的に非常に重いイヤホンになってしまいました。筐体が重いということはイヤホンの装着性や街を歩きながら音楽を聴くというポータビリティには悪影響を与えます。また扱い方によっては断線しやすくなることも考えられます。
 こういった課題に対して弊社なりに出した答えが「intime碧ーLight」でした。音を耳に伝えるフロント側の筐体には真鍮を用い、真鍮独特の響きを出せるようにしました。その一方でツイータを支持する部分の一部を樹脂、一部を樹脂とするハイブリッド構造にしたわけです。その結果、制震性に優れた筐体を用いたことでVSTの良さを活かしつつ、低域から高域まで全域に渡りきれいに音が響きわたるイヤホンが完成しました。しかも一部に樹脂を採用したことでコスト面でもかなり価格を抑えることが出来ました。おかげさまで2019年にはイーイヤホンさんの有線イヤホン部門の年間販売台数でランキング1位に選んで頂きました。これは弊社の考える筐体設計がお客様に認めて頂けたことの証であろうとスタッフ一同思っています。ありがとうございます。
 
 さて、ここまでのお話しだと弊社にとってイヤホン筐体の開発がコンプリートしているように感じられるかもしれませんが、個人的にはまだまだ納得出来ていません。どうしても樹脂を用いることによる制震の甘さを感じており、結果的にはスピードのある低域再生に至っていないのです。
 即ち制震作用があり(専門的には内部損失が大きい)、かつ軽量な材料が弊社にとって求める筐体材料であると言えます。この自粛期間中、諸々の開発に取り組み一つの答えに辿り着きつつあります。次回のブログでその件についてお話しをさせて頂きますね。

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プロフィール

Author:intime with u
「良い音を日常に」「面白いほうのイヤホンメーカ」
 オーツェイド株式会社の渡部です。
イヤホン、セラミック、プライベートなことなど徒然にブログをアップして行きたいと思います。

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