リケーブルについて考えること
最近、ユーザーの方々からintime碧シリーズのリケーブルを開発して欲しいというご意見を頂戴いたします。昨年末に弊社でも煌/轟というリケーブルモデルを販売したのですが、それはそれとして碧シリーズのリケーブルが聴きたいというご意見が多いようです。
ここでイヤホンマニアの方にとっては釈迦に説法になるかもしれませんが、ビギナーの方には目からうろこになるかもしれないお話しをさせて頂きます。
現在リケーブルの主流になっているのがMMCXプラグという同軸プラグを用いたケーブルです。今となってはイヤホンユーザの中では普通に使われている「MMCX」というコネクタですが、実はこれ、イヤホンのようなものに使うことを前提に設計されたものではなかったのです。
このMMCXという規格は元々無線機のアンテナの接合用に考えられた規格だったのです。
だから一度プラグを差し込むと、故障でもしない限り外すことはありませんでした。故に着脱に関する保証はほぼ皆無で「着脱はしないで下さい」や「着脱回数保証=10回」などと仕様書に記載されていたものです。これは金メッキの剥離による電波伝搬の劣化を危惧していたと思われます。
ところがこの規格をなぜかイヤホンに使い始めたイヤホンメーカーさんがいて、それがいつの間にか市場へと広がっていったのが今のリケーブルイヤホンの変遷です。むろんプラグの着脱性なども、それなりに改善されてイヤホン用に使われていると思いますが、元々着脱を想定せずに設計されていますので、着脱による劣化は生じてしまいます。
信頼性が高いと言われているモレックス製のプラグを用いている煌や轟でも、お客様から接触不良による音飛びなどの報告が届いているのは紛れもない事実です。その原因のほとんどはプラグ部分のガタつきです。イヤホン愛好者の方々の多くはコードリールなどでイヤホンをまとめて保管されていますが、その反面非常に乱雑に音楽プレイヤーに巻き付けるなどして保管される方もいらっしゃいます。その結果、プラグ部の軸が曲がりガタつきを起こして接触不良の原因になります。場合によっては断線やプラグピンの破断ということにもなりかねません(幸いに弊社ではまだ同様の報告は受けておりません)。
リケーブルイヤホンをお使いになられるときは、できるだけプラグ部分に横方向の力をかけないようにお使い頂くことが重要かと思います。
なお弊社では現在これらのガタつき対策用の何らかの策を考えていますが、MMCX≓イヤホン用プラグという観点からも恒久的な対策にはならず、暫定的な策になると思われます。すなわちメーカー側の努力と同時にユーザーの方々の方でも、「丁寧」なお取り扱いを必要とする。それがリケーブルイヤホンという製品の特徴だと私は思うのです。
さて、上記のような環境の中においても、弊社はお客様のニーズにお応えすべくリケーブルイヤホンの開発を進めています。おかげさまでここまで蓄積した数々の経験を元にドライバーや筐体に関する品質確保の方法はわかってきました。後はリケーブルプラグの品質確保です。次回弊社がリケーブルを出すときには胸を貼って高品質な製品を提供出来る、そんなリケーブルイヤホンを開発したいと思っている昨今です。